概要
現在の世界は電気モータで動いていると言っても過言ではありません。モータにはACモータとDCモータがあり、様々な形状とサイズで幅広い製品とデバイスを動かしながら、ほとんどの産業及び商業製造部門をけん引しています。グリーンイニシアチブへの世界的な傾向は、家庭用品に影響を与えただけではありません。これにより、企業は製造政策と新しいインダストリー4.0イノベーションを通じて、エネルギー効率の向上と炭素排出量の削減に注意を向けざるを得なくなりました。これらのモータは、高効率と高出力、低消費電力、動作寿命の延長、メンテナンスコストの削減を実現します。 今日のモータを最高レベルの品質に維持する場合、現在の製造及び安全基準に確実に準拠するためのテストが不可欠です。本稿では現在のテスト規格と基準の一部、及びテストと電源ソリューションへの推奨アプローチについて簡単に説明します。
MEPS(最低エネルギー性能基準)の設定
米国は、MEPS(最小エネルギー性能基準)を世界に先駆けて導入しました。しかしながら、それぞれの国が独自の効率基準を設定しているため、グローバルな視点で比較することは困難です。米国は NEMA プレミアム及び EPAct 効率基準に従いますが、欧州連合は効率を測定するための3つの「Eff」クラスを確立し、中国のGuobiaoはモータ効率の3つの「GB」レベルに従います。 (図1)
一方、IEC(国際電気標準会議)はIEC60034を導入しました。IEC60034は、政府がMEPSを指定できるようにする4つのレベルのモータ効率を含む、国際的に関連するテスト及び分類スキームを通じて、エネルギー効率の高い電気モータシステムの開発に貢献しています。
• IE1 標準効率
• IE2 高効率
• IE3 プレミアム効率
• IE4 スーパー プレミアム効率
米国は現在、電気モータがIE3効率基準を満たすことを要求しており、EU とアジアも同様の規制に従っています。グローバルなMEPSは、「グリーン」な環境規制及びポリシーを満たすために、最大エネルギー消費量にさらなる制限を課しています。
試験基準
これらの基準に基づいて、さまざまな条件で実行されるテストの種類を管理します。たとえば、DUT(被試験デバイス)の入力電圧によって、耐電圧試験を実行する電圧が決まります。UL1004、GB12350、IEEE Std.43規格及びGB20160テスト規格では、落雷、誤操作、または故障の際にモータが高電圧に耐えられることを確認するために、耐電圧、絶縁抵抗、及びアース導通試験が必要です。
定格電圧 | 試験電圧 | 試験時間 | |
---|---|---|---|
型式試験 | 42.4Vac以下 | 500Vacまたは1000Vac | 60秒 |
60Vdc以下 | 700Vdcまたは1400Vac + 定格電圧×2.8 | 60秒 | |
日常試験 | 42.4Vac以下 | 600Vacまたは1200Vac + 定格電圧×2.4 | 1秒未満 |
60Vdc以下 | 800Vdcまたは1700Vdc + 定格電圧×3.4 | 1秒未満 |
入力電圧によって決定される特定のテスト電圧を使用して、同様のテストを絶縁抵抗に適用できます。
さらに、企業はIEEE Std.43やGB20160などの規格に適合する必要があり、絶縁抵抗の負電圧でのテストが必要です。接地テストの場合、テスト電流はテスト定格電流の1.5倍、または12V未満で動作する製品の場合は25アンペアです。
電源系統は通常、デバイスの性能または機能をテストする際の最終ステップです。電源規格を満たすために必要な基準は、出力、電圧安定度、周波数安定度、及びTHDとなっており、これらの規格値には全て上下限範囲があります。
グローバル | 中国 | 台湾 | 日本 |
・IEC60034-1 回転機器 ・IEC60034-2 回転機器 ・UL1004 回転機器規格 – 一般要求 ・IEEE Std. 43-2000 ・IEEE112 多相誘導電動機と発電機 | ・GB12350-2009 ・GB20160-2006 ・GB14711 ・GB18211 | ・CNS 10919 ・CNS 1056 ・CNS 14400 | JIS C 4034-1 JIS C 4034-2 JIS C 2110-1 JIS C 4212 |
テスト市場の考察
テスト項目 | 内容 | |
ポンプ | ACW IR GB ACPS | 全てのコイルを短絡しHV端子に接続。ケースをReturn端子に接続。 a) STEP1 ACW = 1800V, HI-Limit = 10mA, Dwell Time = 3秒 b) STEP2 IR = 500V, LO-Limit = 50/100MΩ, Dwell Time = 3/5秒 GND(ケース)をReturnに接続 c) STEP3 GB = 25Aac, HI-Limit = 100mΩ, Dwell Time = 5秒 |
自動車用モータ | ACW IR | 完成品とコイル(全てのコイルを短絡しHV端子に接続。ケースをReturn端子に接続。) a) STEP1 ACW = 1024V, HI-Limit = 2mA, Dwell Time = 1秒 b) STEP2 IR = 500V, LO-Limit = 10MΩ, Dwell Time = 1秒 |
HVAC (コンプレッサ) | ACW IR | 完成品とコイル(全てのコイルを短絡しHV端子に接続。ケースをReturn端子に接続。) a) STEP1 ACW = 1800V, HI-Limit = 2mA, Dwell Time = 2秒 b) STEP2 IR = 500V, LO-Limit = 500MΩ, Dwell Time = 2秒 |
小型モータ | ACW IR | 全てのコイルを短絡しHV端子に接続。ケースをReturn端子に接続。 a) STEP1 ACW = 2160V, HI-Limit = 5mA, Dwell Time = 3秒, ARC = 6 b) STEP2 IR = 500V, LO-Limit = 100MΩ, Dwell Time = 3秒 全てのコイルを短絡しReturn端子に接続 c) STEP3 ACW = 3000V, HI-Limit = 10mA, Dwell Time = 3秒 |
洗浄機 | ACW IR | 全てのコイルを短絡しHV端子に接続。ケースをReturn端子に接続。 a) STEP1 ACW = 1800V, HI-Limit = 2mA, Dwell Time = 2秒 b) STEP2 IR = 500V, LO-Limit = 500MΩ, Dwell Time = 2秒 |
電気モータで実行されるテストの種類は、モータの用途によって異なります。ほとんどの場合、モータには耐電圧試験 (ACW) と絶縁抵抗試験(IR)が必要です。 ポンプモータなどの特定の用途向けのモータには、追加のアース導通試験(GB)及び電力機能試験(ACPS)が必要です。 耐電圧試験は、1024~2160 Vの範囲の電圧で実行されます。絶縁抵抗試験は通常500Vで実行されます。
ソリューション
我々は、今日の電気モータ用に作成されたあらゆる範囲の試験規格をサポートするソリューションを提供しています。AC 耐電圧試験を実施するお客様は、モータの種類、入力キャパシタンスの容量、漏れ電流の要件、及び地域の標準規制を考慮する必要があります。
我々は、500VA 出力のSEシリーズ (SE 7451及びSE 7452) など、十分に強力な耐電圧試験器を推奨しています。 IEEE Std.43 / GB20160 絶縁抵抗規格に準拠するために、我々は、DC耐電圧試験及び絶縁抵抗試験に OPT.798 (DCW負出力変更オプション)を追加することを推奨しています。絶縁抵抗の読み取り中の電気浸透に対応するために、負極性のテストが推奨されるためです。
AC電源規格の要件は、出力電圧、電圧安定度、周波数安定度、THD(全高調波歪み)などの重要な領域に焦点を当てています。 AC電源を使用するモータは、始動時にかなりの起動電流を必要とします。電源を選択する際には、モータに必要な起動電流に注意する必要があります。単相または三相ACモータで最適な電気的性能を得るには、6500/6300 シリーズAC電源をお勧めします。6500/6300 シリーズは、調整可能なランプアップ時間設定を特長としており、モータ始動プロセス中に過負荷なしで電圧を上昇させることができます。
まとめ
電気モータは、世界のエネルギー消費の大部分を占めています。そのため、地球規模での環境意識の高まりに比例して、効率の向上、消費電力の削減、運用寿命の延長に対する要求が高まっています。 我々の試験ソリューションにより、モーターメーカーは製品の品質を継続的に改善し、最新の基準を満たし、より環境に優しい未来のためにエネルギー効率の高い製品を提供できるようになります。