直流電子負荷とは?仕組み・用途・選び方を徹底解説

電源試験やバッテリー試験を行う上で欠かせない装置のひとつが「直流電子負荷」です。直流電子負荷は、さまざまな負荷条件を模擬して動作特性や安全性を検証するために使用されます。しかし、「実際にはどのような仕組みで動作し、どのような場面で必要なのか」といった基本が分からない方や、「自分に合った電子負荷をどう選べばいいのか」と悩む人も多いのではないでしょうか?

この記事では、直流電子負荷の仕組み・用途・選び方について徹底的に解説します。初心者にもわかりやすく、かつ実務で役立つ情報を網羅していますので、ぜひ参考にしてください。

直流電子負荷とは?その仕組みを解説

直流電子負荷をひとことで言えば・・・

「直流電源やバッテリーなどから電力を吸収し、特定の負荷条件を模擬する装置」

となります。

一般的に直流電子負荷は以下の特性を持つ動作モード(負荷モード)に対応しています。

負荷モード(例)概要
定電流(CC)モード設定された電流値になるように電流を流す動作
定抵抗(CR)モード設定された抵抗値になるように電流を流す動作
定電圧(CV)モード設定された電圧値になるように電流を流す動作
定電力(CP)モード設定され電力値になるように電流を流す動作

これらの負荷モードを利用することで、さまざまな負荷条件を模擬し、対象機器が特定の条件下でどのように動作するかを確認できます。

直流電子負荷が使われる主な用途

直流電子負荷の用途は広範囲にわたります。その役割は、「電力を吸収する」ことで動作検証を行う装置ですが、具体的には以下のような場面で活躍します。

1. 電源装置の性能試験

直流増幅器や直流電源装置(AC-DCコンバータなど)は指定された条件で電力を供給できることが求められます。直流電子負荷と交流電源などを使えば、以下の試験が可能です:

主な試験項目概要備考
入力特性試験ラインレギュレーション出力電圧の安定度
出力特性試験ロードレギュレーション出力電圧の安定度
効率特性試験効率計算 
保護機能試験過電流保護(OCP) 

 スイッチング電源の試験方法については、JEITA規格RC-9131Dなどで細かく規定されています。

合わせて読みたい

JEITA規格(JEITA-Webサイトに移動します)

2. バッテリーの充放電試験

リチウムイオンバッテリーや鉛蓄電池などエネルギー貯蔵装置の評価・試験には、直流電子負荷が必要となります。

  • バッテリーの寿命評価(特定条件下での劣化評価)
  • 放電試験による容量確認
  • 直流電源との組み合わせによる充放電試験

3. 太陽光発電・パワーコンディショナー(PCS)の試験

高出力の太陽光モジュールやその出力を調整するPCSの動作評価では、直流電子負荷がその性能を正確に模擬する重要な役割を果たします。

  • 太陽電池モジュールの性能評価
  • MPPT(最大電力点追従)の動作検証

4. その他の用途

  • 電子機器および回路の熱設計試験
  • 電力供給装置の動作範囲検証
  • 再生可能エネルギーシステムの開発と最適化

直流電子負荷の仕組みを支える「各モード」の詳解

各負荷モードがどのような特性を持つのかを理解することで、より実践的に直流電子負荷を活用することができます。

定電流(CC)モード
動作設定された電流が安定して流れるように負荷電流値を制御します
使用例スイッチング電源の負荷変動試験、高速応答性能試験など
定抵抗(CR)モード
動作DUT(各種電源)側からみて設定された抵抗値になるように負荷電流を制御します
使用例各種電源、バッテリーの負荷試験
定電圧(CV)モード
動作設定された電圧に低下するまで負荷電流を制御します。逆に言えば電圧が低下したら電流は流れなくなります。
使用例他のモードと連携したバッテリーの放電試験など
定電力(CP)モード
動作DUT(各種電源)側からみて設定さ電力値になるように負荷電流を制御します
使用例各種電源、バッテリーの負荷試験

直流電子負荷の選び方:どのポイントに注目すべきか?

用途に応じた最適な直流電子負荷を選ぶためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

1. 入力条件(電圧・電流・電力)

テストする機器が使用する電圧範囲、最大電流、消費電力に対応しているかを確認。並列(マスター・スレーブ)運転の可否及び最大拡張数。(一般的に直列運転は不可)

2. 動作モードの柔軟性

必要とする負荷モード(CC、CR、CV、CP)に対応しているかを確認。また、ダイナミックモードや複数の負荷モードの連携機能、外部電圧制御、アプリケーションソフトウエアによる機能追加など。

3. 設定及び測定確度

電流設定確度は設定レンジ及び負荷モードによって異なる。また、測定機能について重視する場合は電圧、電流測定確度についても要確認。

4. 負荷応答速度

低電圧高速DC/DCコンバータの負荷応答試験をする場合、高速応答の電子負荷が必要になります。高速の負荷応答試験では接続ケーブルを最短にするなど、いくつかの配慮が重要です。

5. 操作性とインターフェース

視認性の良いディスプレイや直感的に設定が可能な操作性。PC制御が必要な場合、各種アプリケーションソフトウェアやインターフェース(GP-IB、USB、LANなど)との親和性も確認。

6. 拡張性と将来性

必要に応じて電流・電力を増強できるモデルを選ぶと長期的な運用に便利。

直流電子負荷のまとめ

直流電子負荷は、電源試験やバッテリー試験において不可欠な装置であり、幅広い用途に対応する能力を持っています。選定時には入力条件や負荷モード、操作性といった要素を総合的に考慮し、最適な装置を選びましょう。

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