目で見て判断すること

私の息子が小学生の頃、地元の野球チームに所属していました。そのチームの監督が指導の中で常に子どもたちに伝えていたのが、「見て判断しなさい」という言葉でした。

例えば、自分が3塁ランナーでワンアウト、バッターが外野にフライを打ったとします。この状況で、多くの少年野球の指導者は「タッチアップ準備」や「ホームへGo」など、具体的な指示を出すことが一般的かもしれません。しかし、息子の野球チームでは、3塁ランナーに対して「見ろ」と一言だけ伝えました。つまり、打球の行方を自分の目でしっかり見て、自分で次の行動を判断しなさいという方針でした。

話は変わりますが、私が若かった頃(今でも若いつもりですが、笑)、当時の社長から「エンジニアたるもの波形を見なさい」と言われたことをよく覚えています。製品が所望の動作をしない際、回路図を見て悩んでいた私に対し、社長がオシロスコープで波形を確認するよう促してくれたのです。実際に波形を観測すると、動作の異常が明らかになり、不具合の部品を特定して無事に修理することができました。

開発した製品が要求仕様を満たしているか、またハードウェアとしてどの程度のマージンを持った設計になっているかを確認する基本は、やはりオシロスコープで波形を確認することにあると考えています。ただし、波形を観測する際には測定方法が正確であることが前提であり、さらにその波形が仕様を満たしているかどうかを判断するスキルも必要です。これらは非常に奥深い領域です。

「見て判断する」という考え方は、あらゆる分野に通じるものかもしれません。特にハードウェアエンジニアにとって、目で見て良否を判断するスキルは必須であり、非常に重要なものだと改めて感じます。

執筆者:F.M