- 1. 直流電子負荷とは
- 2. 直流電子負荷の主な役割
- 3. 電子負荷の動作原理
- 4. 主な模擬負荷の種類
- 4.1. 抵抗負荷と電子負荷の違いは?(テスますくんの知って得するポイント!)
- 5. 直流電子負荷の回路方式
- 5.1. ドロッパー回路方式のメリット・デメリットは?(テスますくんの知って得するポイント!)
- 6. 直流電子負荷の機能構成
- 6.1. ① 電子負荷の模擬負荷動作※
- 6.2. 電子負荷の負荷モードの目安って?(テスますくんの知って得するポイント!)
- 6.3. 「ビルトインテスト機能」とは?(テスますくんの知って得するポイント!)
- 6.4. ②・③電子負荷の設定・測定レンジ
- 6.5. 電子負荷の電力は四角ではないって?(テスますくんの知って得するポイント!)
直流電子負荷とは
ひとことで言うと、「色々な電源の出力に模擬負荷として接続し電源の性能を試験するためのもの」です。
例えば、皆さんが使っているパソコンやコピー機、液晶テレビなど家庭用コンセントから電源を取るほとんどの電気製品の中には交流を直流に変換する「スイッチング電源」と呼ばれる電源が内蔵されています。
この「スイッチング電源」は入力側に交流(日本国内では電圧100V)を入れると出力側に数V~数十Vの直流が出てくるというものです。パソコンの中に組み込まれているスイッチング電源は出力側の直流を使ってCPUやハードディスク、DVDドライブなどを動かしています。
このCPU やハードディスクなどのかわりに電子負荷を接続し、電源の出力側に電流を流します。このとき、実際の電流よりも多く流したりして(実際の使用条件よりも厳しい条件で)試験するために電子負荷が使用されています。
ここでは、当社のドロッパー回路方式の直流電子負荷を対象とさせて頂きます。ドロッパー回路方式の交流電子負荷およびスイッチング回路方式の回生型電子負荷については別項にてご参照下さい。
直流電子負荷の主な役割
- 模擬負荷動作
- 模擬負荷消費
電子負荷の動作原理
従来の抵抗の代わりにパワートランジスタであるFETやIGBTを動的制御して、任意で負荷のふるまいをさせます。
主な模擬負荷の種類
- 抵抗負荷(C/L負荷) ホーロー抵抗や摺動抵抗
- 電子負荷
抵抗負荷と電子負荷の違いは?(テスますくんの知って得するポイント!)
一番の違いはダイナミックモード(動的負荷モード)の有無です。動的負荷は電子負荷ならではの動作モードです。
抵抗負荷
【メリット】
- 純抵抗なので、抵抗本来の特性を再現・試験出来る
- イニシャルコストが安い
【デメリット】
- FAN付きはあるが、基本的に発熱量が圧倒的に多く空調コストが掛かる
- 手動操作が基本で、作業工数と自動化するにはコストが掛かる
電子負荷
【メリット】
- 各種モードが豊富で、通信など負荷試験にオールインワンパッケージであること
- 自動化に優れており、切替作業等の工数削減に繋がる
- 通信機能付きで、リモート制御により効率的に試験することが可能
【デメリット】
- イニシャルコストが高い
- 抵抗負荷に比べた特性が性能により差異が大きい場合がある
直流電子負荷の回路方式
- ドロッパー回路方式(電源からのエネルギーを熱へ変換)
- スイッチング回路方式※1(電源からのエネルギーを系統へ電力回生変換)
- ハイブリッド回路方式※2(①と②を組合せした回路、低電圧領域のみドロッパー回路動作でそれ以外はスイッチング回路動作)
※1 回生型電子負荷の項にてご説明させて頂きますので、この項では①のドロッパー回路方式を「電子負荷」対象としてお考え下さい。
※2 現在当社では販売しておりません
ドロッパー回路方式のメリット・デメリットは?(テスますくんの知って得するポイント!)
メリット | 何と言っても応答性や特性、低ノイズ特性はドロッパー回路方式が優れています |
デメリット | 大きさ、重さ、容量あたりコスト、変換効率、発熱はスイッチング回路方式に比べ劣ります |
ドロッパー回路方式の電子負荷は「高特性・高性能・小容量に比較的向いている」と言えます。
直流電子負荷の機能構成
電子負荷は以下主に7つの機能により構成されています。
- 模擬負荷動作/模擬消費動作
- 測定
- 設定
- 表示・操作・アラーム
- 通信(リモート制御)
- 並列(マスタースレーブ)運転
- その他・オプション
① 電子負荷の模擬負荷動作※
電子負荷は基本として負荷モードと動作モードの大きく2つに分かれます。負荷モードを「基本動作」、動作モードを「機能動作」とお考え下さい。
※ここではは当社ハイエンド多機能電子負荷を基準にご説明させて頂きます。
(1)負荷モード:CC(定電流)、CV(定電圧)、CR(定抵抗)、CP(定電力)、EXT(外部制御)、SHORT(短絡)
(2)動作モード:ノーマル(Normal)、ダイナミック(Dynamic)、シーケンス(Sequence)、スイープ(Sweep)
(3)切替モード:(1)+OFFのうち複数以上の切替組合せ動作
(4)専用モード:負荷モード・動作モードをあるご用途に限定専用化したもの
(1)負荷モードと(2)動作モード
以下が電子負荷の負荷モード(列)と動作モード(行)をマトリックスにしたものです。
(1)負荷モード
何とも言っても4つのCC(定電流)、CV(定電圧)、CR(定抵抗)、CP(定電力)は電子負荷にとって基本中の基本にあたる動作です。負荷電流(Y)と負荷端子電圧(X)は以下の関係が目安となります。
電子負荷の負荷モードの目安って?(テスますくんの知って得するポイント!)
おおざっぱに言いますと
・電源はCV(定電圧)が多く、電子負荷は主にCC(定電流)で動作させます
・電源がCC(定電流)の場合は、電子負荷は主にCV(定電圧)で動作させます
よくオネジ、メネジって言葉を聞きますが、
電源出力がCV(定電圧)なら電子負荷はCC(定電流)
電源出力がCC(定電流)なら電子負荷はCV(定電圧)
で覚えて頂けると目安になります。LED電子負荷と呼ばれるものがありますが、LED電源は定電流(CC)電源が多い為CV(定電圧)負荷モードに電子負荷として専化したものをLED電子負荷として名称を付けたものとお考え頂ければと思います。
(2)動作モード
電子負荷は負荷モードを基本動作とすると、動作モードはその応用アプリの機能動作とお考え下さい。
代表的なものはダイナミックモード(スイッチングモードとも呼ばれます)です。ステップや周波数により2値的な状態(High/Low)を繰り返し動作させる試験ですが、これは抵抗負荷には出来ない動作で、動的負荷は電子負荷ならではの特長とも言えるのかもしれません。
他にはシーケンス動作や電源の「フの字」特性や保護特性をを試験する為のスイープモードがあります。
ダイナミック(Dynamic)モード
動的負荷モードやスイッチングモードとも呼ばれます。
2値的制御(HIGH、LOW)と複数ステップにより電源の動的負荷変動試験が可能です。
また例として以下2つにによる設定が可能です。
①周波数
②時間
スイープ(Sweep)モード
電源の特性及び保護試験に使われます。例として以下対象があります。
①V/I特性
②過電流保護特性
③過電力保護特性
シーケンス(Sequence)モード
任意の電流波形を再現する為、負荷電流設定値、時間設定、スルーレートの組合せステップの
シーケンス設定により動作します。
(3)電子負荷の切替モード
上記負荷モードのCC(定電流)、CV(定電圧)、CR(定抵抗)、CP(定電力)4つの負荷モードとOFFのうち
複数を切替して組合せ動作するモードをいいます。
蓄電池放電する時に電子負荷を使用しますが、電子負荷としては定電流(CC)として放電し、終始電圧になったら
OFFもしくは定電圧(CV)動作に移ります。この定電流(CC)+定電圧(CV)、定電流(CC)+OFFなどがあります。
(4)電子負荷の専用モード
上記負荷モード・動作モードをあるご用途に限定専用化したものを専用負荷・動作モードと呼んでいます。
PVパネルの負荷を取るMPPTモードやLED電源の負荷を取るLEDモード(LED電子負荷とも呼ばれます)
①専用負荷モード:LED、MPPT(最大電力追従点制御)、GCC(交流負荷での被試験体:発電機)・・・
②専用動作モード:エクストリームパワー/ターボ(時限定格内での定格電力増)・・・
「ビルトインテスト機能」とは?(テスますくんの知って得するポイント!)
専用動作モードは別名「ビルインテスト機能」とも呼ばれ、各種専用アプリケーションに特化して、テストプラグラムがあらかじめ設定されており、機能を簡単・使いやすいようにワンタッチボタン操作により専用ボタン/メニューがあるものです。
②・③電子負荷の設定・測定レンジ
電子負荷は以下2つのレンジタイプがあります。
(1)単レンジタイプ
(2)複数レンジタイプ
「大は小を兼ねる」発想により、定格の電圧・電流に対し3レンジH/M/L、2レンジH/M/Lなど
設定・測定値に対し分解能のレンジ変更出来る機種が多くあります。
電子負荷の電力は四角ではないって?(テスますくんの知って得するポイント!)
電力(W)=電圧(V)×電流(A)ですが、電子負荷の仕様書の3つの数値を計算してみて下さい。当社の例で言うと
300W、120V、60A 120V×60A=7,200W
あれっ? 300Wじゃない?不思議?
電子負荷は被試験物に合わせなるべく広く電圧と電流をとっています。電力定格としてはあくまで300W制限となりますが、電力カーブとしては縦(電圧)・横(電流)が電源試験で広くとれるように工夫されています。ズーム的な使いやすさの発想ですので電流×電圧で計算してみると電力密度の指標となります。
7200W÷300W=24
これは倍率と呼ばれています。この数値が高ければ電力密度が高いと言えます。