交流電子負荷とは

ひとことで言うと、「色々な機器の模擬負荷として接続し、発電機器の試験するためのもの」です。
例えばパワーコンディショナー(PCS)に代表される太陽電池の発電エネルギーを系統電力へ変換する機器は、交流で発電されます。
交流発電したエネルギーは一般的に系統電圧源であるAC100VやAC200Vに接続されて、白物家電やエアコンなどの動力源となります。
この白物家電やエアコンの変わりに交流電子負荷を接続し、実際の動作電力(W)を模擬し、パワーコンディショナー(PCS)の発電の試験をする為に交流電子負荷が使用されております。

交流電子負荷の主な役割

  1. 模擬負荷動作
  2. 模擬負荷消費

主な用途は模擬負荷消費として使用されるケースとなり、朝、昼、晩の各機器の電力消費を再現させる(トレンド負荷)として、使用されます。

交流電子負荷の動作原理

  1. ドロッパー方式:ダイオードで整流した後にパワートランジスタであるFETやIGBTを動的制御して、任意で負荷のふるまいをさせます
  2. スイッチング方式:内部は信頼性の高い安全な商用トランス+AC/DC(整流ユニット)、DC/AC(DC/DC)(インバータユニット)となっており、IGBTまたはSiCをスイッチング(PWM)動作して電子負荷のふるまいをさせます

PWMとは?(テスますくんの知って得するポイント!)

Pulse Width Modulationの略です。パルス幅変調方式とも言われ、パルスのディーティサイクルを変えて制御します。またスイッチングにはハードスイッチング、ソフトスイッチングなどがあります。

主な模擬負荷の種類

  • RLC負荷   R:ホーロー抵抗や摺動抵抗など L:リアクトルコイルなど C:コンデンサ
  • ドロッパ―方式交流電子負荷
  • スイッチング方式交流電子負荷

RLC負荷と電子負荷の違いは?(テスますくんの知って得するポイント!)

一番の違いはダイナミックモード(動的負荷モード)の有無です。動的負荷は電子負荷ならではの動作モードです。

RLC負荷

【メリット】

  • 純粋な抵抗やリアクトル、コンデンサなので本来の特性を再現試験できる

【デメリット】

  • FAN付きはあるが、基本的に発熱量が圧倒的に多く空調コストが掛かる
  • 手動操作が基本で、作業工数と自動化するにはコストが掛かる

ドロッパ―方式交流電子負荷

【メリット】

  • 各種モードが豊富で、通信機能もあり負荷試験にオールインワン    パッケージであること
  • 自動化に優れており、切替作業等の工数削減に繋がる
  • 通信機能付きで、リモート制御により効率的に試験することが可能
  • 直流も使用することができる為、交直両用として使用可能

【デメリット】

  • イニシャルコストが高い
  • ドロッパ―回路方式では、RLC負荷と比較すると再現性に差異が発生する

スイッチング方式交流電子負荷

【メリット】

  • 各種モードが豊富で、通信機能もあり負荷試験にオールインワン    パッケージであること
  • 自動化に優れており、切替作業等の工数削減に繋がる
  • 通信機能付きで、リモート制御により効率的に試験することが可能
  • イニシャルコストがドロッパ―方式と比べて安い

【デメリット】

  • スイッチング方式では、発電したエネルギーを回生させる電力系統が必要となる

交流電子負荷の回路方式

  • ドロッパー回路方式(電源からのエネルギーを熱に変換)
  • スイッチング回路方式(電源からのエネルギーを系統へ電力回生変換)

回路方式による力率可変機能に関して大きな違い(テスますくんの知って得するポイント!)

回路方式スイッチング回路方式ドロッパー回路方式RLC負荷方式
力率変動時の動き力率(位相)を変更し、正弦波での位相可変

無効電力の再現可!
CFを変更し、正負範囲のみ位相変更

無効電力の再現不可
LCの容量を可変させ、正弦波での位相可変

無効電力の再現可!
ゼロクロス部の
電流波形歪
無し有り
小電流において歪みが大きい
無し
設定範囲力率(±1.00)と位相(±90deg)
の2種類の設定が可能
力率(±1.00)の設定のみ
※CFの値は自動設定
LCの容量可変をしながら
観測波形から位相差を確認
印加電圧
の依存性
無し
任意の設定で要求位相の再現可
有り
印加電圧に応じてCF値が可変
有り
印加電圧に応じて調整が必要
回生機能有り(カーボンニュートラル対応)無し無し
CF可変√2~4.0√2~5.0無し 
サイズ

スイッチング回路方式の交流電子負荷は、「無効電力の再現」ができる為、交流負荷として最適な電子負荷と言えます。

交流電子負荷の負荷入力電圧

交流電子負荷は直流電子負荷と比べると最小動作電圧が高い為、直流電子負荷と使用する場合には注意が必要です。

  1. ドロッパー回路方式:50Vrms~350Vrms(70V~500V)
  2. スイッチング方式:50Vrms~480Vrms(70V~680V)

交流電子負荷の負荷入力周波数

交流電子負荷の入力周波数は一般的には40~440Hzとなります。商用周波数50/60Hzと航空機向け電源周波数400Hzまで対応しております。またインバータ用負荷に対応する為、周波数範囲を広げたオプションもあり、使用する電源周波数における選定が必要です。

  1. ドロッパー回路方式:DC,40~440Hz(CC,CPモード時)、DC~440Hz(リニアCC,CR,CVモード)
  2. スイッチング方式:DC,40~70Hz、DC,40~440Hz(オプション)、DC,5~1000Hz(オプション)

交流電子負荷の機能構成

電子負荷は以下主に7つの機能により構成されています。

  • 模擬負荷動作/模擬消費動作
  • 測定
  • 設定
  • 表示・操作・アラーム
  • 通信(リモート制御)
  • 並列(マスタースレーブ)運転
  • その他・オプション

① ドロッパー回路方式の交流電子負荷の模擬負荷動作

交流電子負荷は基本としてAC負荷モード、DC負荷モードと動作モードの大きく2つに分かれます。負荷モードを「基本動作」、動作モードを「機能動作」とお考え下さい。

(1)AC負荷モード:CC(定電流)、リニアCC、CV(定電圧)、CR(定抵抗)、CP(定電力)、外部アナログ
(2)DC負荷モード:CC(定電流)、リニアCC、CV(定電圧)、CR(定抵抗)、CP(定電力)、外部アナログ


(3)動作モード:CF(クレストファクタ)、PF(力率)、AC整流負荷
(4)専用モード:OCPテスト、OPPテスト、Shortテスト、ヒューズテスト、バッテリー放電テスト、突入電流シミュレーション、サージ電流シミュレーション
    
(1)AC負荷モード(2)DC負荷モード
以下が電子負荷の各負荷モード(列)とAC動作モード(行)をマトリックスにしたものです。

AC負荷モードと動作モードのマトリックス図
DC負荷モードと動作モードのマトリックス図


何とも言っても4つのCC(定電流)、CV(定電圧)、CR(定抵抗)、CP(定電力)は電子負荷にとって基本中の基本にあたる動作です。
負荷電流(Y)と負荷端子電圧(X)は以下の関係が目安となります。

主な負荷モード

電子負荷の負荷モードの目安って?(テスますくんの知って得するポイント!)

大雑把に言いますと 
・電源はCV(定電圧)が多く、交流電子負荷は主にCC(定電流)、CR(定抵抗)、CP(定電力)で動作させます
・電源がCC(定電流)の場合は、交流電子負荷はCV(定電圧)で動作させます
※交流電圧源は、定電流動作するものがない為、CV(定電圧)モードを使うシーンはほとんどありません。
  
外部アナログ入力は、電子負荷の外部アナログ入力端子に0~10Vの直流電圧を入力し、アナログ電圧と比例的に負荷電流を増減させるモードです。
電子負荷の定格電流値まで負荷電流を流したい場合は10Vを入力し、0Aにしたい場合は0Vを入力します

外部アナログモード

また交流電子負荷にはリニアCCモードがあります。交流電源からの出力が正弦波以外にも、UPS矩形波や電圧ステップ出力に対応した負荷モードとなります。

(3)動作モード
交流電子負荷は負荷モードを基本動作とすると、動作モードはその応用アプリの機能動作とお考え下さい。代表的なものは、クレストファクタ可変と力率可変モードです。

CF(クレストファクタ)可変モード
クレストファクタは波高値と言われ、波形のピーク値と実効値の比(クレストファクタ=ピーク値/実効値)で定義されます。普段の生活でクレストファクタを意識することはほとんどありませんが、交流電源の世界では重要な要素となっています。クレストファクタが1.41に近ければ問題になることはほとんどありませんが、これが2.0や3.0を超えると次のような問題を引き起こす可能性があります。

  • 皮相電力の増加により電力損失が増加する
  • 必要な機器の容量を大きくしなければならずコスト増加になる
  • 高調波成分の増加によるノイズ発生で機器が誤動作することがある
  • 最悪の場合、リアクトルなどが焼損することがある

クレストファクタ(CF)を負荷模擬することで、上記の問題点を検査の際に把握することが可能です。

PF(力率)可変モード
力率を一言で言うと「電源から出力された電力が有効に使われている割合」となります。交流電力は3種類分類され、以下のように定義されます。


力率が「1」の場合が、一番無駄なく消費されている状態です。力率は悪くなればなるほど「0」に近づき、無効電力が増えていきます。力率が1に近ければ問題になることはありませんが、0に近くなると以下のような問題を起こす可能性があります。

  • 電流の増大
  • 電力損失の増加
  • 電圧降下の増大

力率(PF)を負荷模擬させることで、上記問題点が発生した場合でも、電源として正しく動作できるかを確認することが可能です。
力率(PF)を可変させるには、負荷電流の位相を遅れる方向や進み方向に変更します。

 交流電子負荷の力率可変のポイント(テスますくんの知って得するポイント!)

力率可変試験では、遅れ位相や進み位相を発生させて無効電力の再現をする機能が必要です。ドロッパ―方式交流電子負荷は力率を可変しても、無効電力の再現ができない簡易的な力率可変機能となります。完全な無効電力の再現まで必要な場合は、スイッチング方式の交流電子負荷でご検討ください。

AC整流負荷モード
UPS からPVインバータ(PCS) の評価用として、IEC62040-3 およびIEC61683 のテスト仕様に対応した整流負荷モードです。整流時の非線形負荷(Non-Linear CC)モードならびに非線形負荷(Non-Linear CC) +抵抗負荷(CR) モードの2つの動作が可能です。

(4)専用モード
  試験用途に限定化した専用負荷を専用モードと呼んでおります。交流電子負荷には定番のOCP(過電流)テスト・OPP(過電力)テストのほかに、Shortテスト、ヒューズテスト、バッテリー放電テスト、突入電流シミュレーション、サージ電流シミュレーションなど多種多様な専用モードがあります。

テストモード例

バッテリー放電モード例

3つのバッテリー放電モードを搭載。指定電圧ならびに放電時間を設定し安全に放電試験が可能です。

突入電流/サージ電流シミュレーション例

(5)マスタースレーブモード
マスタースレーブモードにはブーストモードと3PHモードの2つの動作モードがあります。ブーストモードは並列アプリケーションで、最大8台(マスター機含む)まで並列接続が可能です。3PHモードは、3相アプリケーションで、3台を同時ON/OFFさせて三相負荷制御することで三相3線または3相4線や単相3線結線に接続することができます。

② スイッチング方式の交流電子負荷の模擬負荷動作

スイッチング方式の交流電子負荷は基本としてAC負荷モード、DC負荷モードと動作モードの大きく2つに分かれます。負荷モードを「基本動作」、動作モードを「機能動作」とお考え下さい。

(1)AC負荷モード:CC(定電流)、CR(定抵抗)、CP(定電力)、外部アナログ、GCC(発電機用定電流モード)、GCR(発電機用定抵抗モード)
(2)DC負荷モード:CC(定電流)、CV(定電圧)、CR(定抵抗)、CP(定電力)、外部アナログ、MPPTモード


(3)動作モード:CF(クレストファクタ)、PF(力率
(4)マスタースレーブモード:1P2W(単相2線)、1P3W(単相3線)、3P3W(三相3線)

(1)AC負荷モード(2)DC負荷モード

以下が電子負荷の各負荷モード(列)とAC動作モード(行)をマトリックスにしたものです。

AC負荷モードと動作モードのマトリックス図
DC負荷モードと動作モードのマトリックス図


ドロッパ―方式の交流電子負荷同様に4つのCC(定電流)、CV(定電圧)、CR(定抵抗)、CP(定電力)は電子負荷にとって基本中の基本にあたる動作です。

主な負荷モード

外部アナログ入力は、電子負荷の外部アナログ入力端子に0~10Vの直流電圧を入力し、アナログ電圧と比例的に負荷電流または負荷電力を増減させるモードです。
電子負荷の定格電流値(定格電力値)まで負荷電流を流したい場合は10Vを入力し、0A(0W)にしたい場合は0Vを入力します。また力率可変機能も外部アナログ入力で制御することが可能です。

外部アナログモード(CC/CP)
外部アナログモード(PF)

交流電子負荷にはGCC(発電機用定電流モード)とGCR(発電機用定抵抗モード)があります。エンジン発電機のように出力波形に歪みが含まれていても、安定して負荷をとることが可能です。

MPPTモードはユニークな負荷モードです。PVパネルを直接接続してIV特性などの試験が可能です。MPPTは最大電力追従点と呼び、最大電力が得られるまで動作電圧と電流を調整し続ける制御方法です。山登り法といわれる制御方式を採用しております。

(3)動作モード
交流電子負荷は負荷モードを基本動作とすると、動作モードはその応用アプリの機能動作とお考えください。代表的なものは、ドロッパー方式と同様にクレストファクタ可変と力率可変モードです。

CF(クレストファクタ)可変モード
クレストファクタは波高値と言われ、波形のピーク値と実効値の比(クレストファクタ=ピーク値/実効値)で定義されます。普段の生活でクレストファクタを意識することはほとんどありませんが、交流電源の世界では重要な要素となっています。クレストファクタが1.41に近ければ問題になることはほとんどありませんが、これが2.0や3.0を超えると次のような問題を引き起こす可能性があります。

  • 皮相電力の増加により電力損失が増加する
  • 必要な機器の容量を大きくしなければならずコスト増加になる
  • 高調波成分の増加によるノイズ発生で機器が誤動作することがある
  • 最悪の場合、リアクトルなどが焼損することがある

クレストファクタ(CF)を負荷模擬することで、上記の問題点を検査の際に把握することが可能です。

PF(力率)可変モード
力率を一言で言うと「電源から出力された電力が有効に使われている割合」となります。交流電力は3種類分類され、以下のように定義されます。


力率が「1」の場合が、一番無駄なく消費されている状態です。力率は悪くなればなるほど「0」に近づき、無効電力が増えていきます。力率が1に近ければ問題になることはありませんが、0に近くなると以下のような問題を起こす可能性があります。

  • 電流の増大
  • 電力損失の増加
  • 電圧降下の増大

力率(PF)を負荷模擬させることで、上記問題点が発生した場合でも、電源として正しく動作できるかを確認することが可能です。
力率(PF)を可変させるには、負荷電流の位相を遅れる方向や進み方向に変更します。

交流電子負荷の力率可変のポイント(テスますくんの知って得するポイント!)

スイッチング方式の交流電子負荷は無効電力の再現が唯一可能な交流電子負荷となります。最大位相差で-90deg~+90degまでの遅れ、進み位相の設定が可能です。

(4)マスタースレーブモード
マスタースレーブモードには1P2W(単相2線)と1P3W(単相3線)、3P3W(三相3線)の3つの動作モードがあります。1P2Wは並列アプリケーションで、最大5台(マスター機含む)まで並列接続が可能です。1P3Wは単相3線式の専用モードで2台もしくは4台での接続において、各相毎(L1-N間、L2-N間)の設定と同期したLOAD ON/OFFが可能です。3P3Wは三相3線式の専用モードで、R相、S相、T相それぞれの設定と同期したLOAD ON/OFFが可能です。また3相4線式の結線で接続した場合でも同様に動作可能です。


(5)その他
スイッチング方式の交流電子負荷は、系統連系回生)動作となります。ドロッパー方式と違い負荷を熱に変換せず、負荷電力を電力変換し系統側へ逆電力(回生)させる動作となります。

交流電子負荷の系統連系のポイント(テスますくんの知って得するポイント!)

スイッチング方式の交流電子負荷において、系統連系回生)時に発生するノイズや系統連系の保護規定について、注意する必要があります。回生時にノイズが大きいと、そのエネルギーを使用している機器に影響を与えてしまい誤動作の原因となります。また系統連系の保護規定に準拠していない場合、回生時の電力品質の担保ができなくなり、系統電圧が不安定となる要因となります。KGのスイッチング方式の交流電子負荷は、系統連系時において以下の機能を有しており、回生時の電力品質を担保しております。

■系統連系規定に準拠
系統連系保護装置認定試験に準拠した、系統監視ならびに保護機能を装備しており、一般的な市販パワーコンディショナと同等の監視・保護機能を有し、エネルギーを安全に無駄なく循環させることができます。各種系統監視機能は任意の値に設定が可能です。

■回生電力ノイズ CISPRのClassAに準拠
回生電力ノイズがClassAに準拠。回生電力ノイズに起因した他の機器への動作不良などの影響がないように低ノイズとなっております。