【やさしい技術解説】スイッチング電源のノイズ測定は何故難しいのか? その4
コモンモードノイズを減らす方法は主に以下の4つの方法が有ります。
- オシロスコープの対地インピーダンスを高くする方法
オシロスコープのGND線を通るコモンモードノイズ電流は、オシロスコープの対地インピーダンスに応じて、コモンへと流れます。当然ですがオシロスコープの対地インピーダンスが高ければ流れる電流は少なくなり、コモンモードノイズも小さくなります。しかしオシロスコープの電源ケーブルや筐体及び信号ケーブルの対地インピーダンスにより、高周波まで高い値を得ることはできません。図1はオシロスコープの対地インピーダンスの例になります。
オシロスコープ本体のみの対地容量が50~200pFあるほか、信号ケーブル又はプローブを接続すると対地容量は、ケーブルの空間位置によって変動する上、ケーブルの長さと、これら対地容量により複雑な共振現象を示し、周波数によっては数Ω~数100Ωまで低下します。これはACコンセントに接続しなくてもコモンモード電流が流れる事を示しており、たとえバッテリー駆動のオシロスコープでも避けがたい問題です。 - 供試電源のフレームグランド(FG)を接地する方法
スイッチング電源のFG端子に現れるノイズ電圧が十分小さく、更にそのFG端子までのインピーダンスが小さいときにはFG端子を接地する事により、コモンモード電流を減少させられます。入力端子側のコモンへ流れる電流の影響を抑える事が出来ます。FG端子に現れるノイズ電圧が大きい場合には、これによるループ電流が増大し、かえって悪影響を及ぼすことになります。 - スイッチング電源の入力端子にコモンモードのチョークコイルを挿入する方法
スイッチング電源の入力端子側のコモンへと流れる電流を減らす為に入力端子にコモンモードのチョークコイルを挿入します。コモンモードチョークにより入力端子のインピーダンスが上がりますのでこちらを経由するノイズを小さくする事が出来ます。チョークコイルは端子に最短距離で接続することが必要です。 - 供試電源出カコモン端子と測定器のコモン側を接続する方法
オシロスコープのGND線にコモンモード電流が通過する事により誤差を発生する訳ですから、電源コモン端子と測定器のコモン端子を短絡しZcに流れない様にする事が考えられます。しかし、現実にはオシロスコープのGND線は数cmの電線という低いインピーダンスであり、この経路を無効にするにはより低いインピーダンスでの短絡が必要になります。物理的にさらに低い短絡をさせる事は困難であり、あまり効果的な方法ではありません。
以上の様にコモンモードノイズを減らす方法はいくつか考えられますが、十分排除する事が出来ない場合もあります。そこで次回は差動プローブを使用してコモンモードノイズの影響を減らす方法について取り上げます。
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