【やさしい技術解説】スイッチング電源のノイズ測定は何故難しいのか? その5

コモンモードノイズの影響を積極的に防止する方法に、差動プローブ又は差動アンプを使う方法があります。スイッチング電源の評価試験などでは、この方法が理想的と言われています。

差動プローブとは簡単に説明しますと、同じ入力部を2つ持ち、その2つに加えられた信号を「引き算」するプローブと言う事になります。理想的な差動プローブであれば2つの入力に全く同じ信号が加わえた場合同じ信号同士を「引き算」する事になりますから、その出力には全く信号が現れない事になります。

これはちょうど、通常のオシロスコープのプローブを2本使い、GND線は互いに結線した状態でその信号線をスイッチング電源の出力とGNDにあて、オシロスコープの信号間の引き算機能を使い「引き算」させたのと同じ状態です。

コモンモードノイズはオシロスコープのGND線などを経由してコモンに流れる電流がノイズとなって観測されます。コモンを基準に見ればオシロスコープのGND側にもコモンモードノイズと言う信号が加えられた形になります。同様にコモンから見ればオシロスコープの信号線側も基準であるGNDが動くため、同一の信号が加わったのと同じ事となります。

このためオシロスコープの信号線とGND線間の信号をそれぞれ独立した観測をし、2つを「引き算」すればコモンモードノイズの影響は除外され、本来見たいスイッチング電源の出力に現れるノイズのみを観測する事が可能になります。

但しこの方法は操作が煩雑な上にプローブのGND線同士も長々とした状態になるなど、適切な配線状態にする事が難しく性能を得る事も簡単では有りません。十分な結果を得るには差動プローブを使用する必要があります。差動プローブを使用すれば非常に良好にこの「引き算」を行う事が出来ます。

但し差動プローブを使用しても、入力端子への信号線の接続方法やグランド線の処理が不適当であれば、良い結果が得られません。入力信号線はシールド線又は同軸線にて出来るだけ短く、そして2本を等しい長さに保ち、被測定端子側のシールドシース(被覆)同志を接続します。又、入力信号ケーブルが20㎝以上になる時には、特性インピーダンスにて終端しなければなりません。

更には差動プローブ自体の性能にも注意が必要です。実在の差動プローブの「引き算」する能力は完全なものでは有りません。その「引き算」の能力を示すのが同相電圧除去比(CMRR)と言われる数値です。この値が高周波帯域(100MHz帯域等)まで十分な差動プローブを選択する必要が有ります。

ただ一般に売られている差動プローブは汎用的なものの為、過剰な仕様性能で高価で有るなど必ずしもスイッチング電源のノイズ測定に最適とは言えません。弊社ではDP-100(下の写真)というスイッチング電源のノイズ測定に特化し、性能と価格のバランスの取れた差動プローブを提供しています。

DP-100

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