【やさしい技術解説】スイッチング電源のノイズ測定は何故難しいのか? その6
スイッチング電源のノイズは複雑です。
・スパイクノイズ
・スイッチングリップル
・ACリップル
これらを混合したものが一般的なスイッチング電源のノイズになります。この為、得られる測定結果は何に注目するかにより大きく変わってきます。
下の図1はAC入力DC出力タイプのスイッチング電源の一般的なノイズの波形を表したものになります、ここから読み取れる値は細かく分類すると
A) リップルノイズ電圧 (スパイクノイズ + スイッチングリップル + ACリップル)
B) リップル電圧 (スイッチングリップル + ACリップル)
C) スパイクノイズ電圧
D) スイッチングリップル電圧
E) ACリップル電圧
と実に5項目にもなります。スイッチング電源の検査や評価を行うときはこれらの何を測定するのかをしっかり認識した上で計測する必要が有ります。なおDC入力DC出力タイプのスイッチング電源でもACリップルが無くなるだけで他は同様です。
何を持って「ノイズ」とするかは各国やメーカーなどに因っても異なりますが、日本では社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が定める規格RC-9131B「スイッチング電源試験方法(AC-DC)」にて、
・リップル電圧 (図1のB)
出力端子間に現れる入力周波数及びスイッチング周波数と同期した電圧(Peak to Peak)を測定する。
・ノイズ電圧 (図1のC)
出力端子間に現れるリップル以外の高周波ノイズ電圧(Peak to Peak)を測定する。
・リップルノイズ電圧 (図1のA)
出力端子間に現れるリップル及び高周波ノイズ電圧の合成値(Peak to Peak)を測定する。
と定めており、それぞれの値を区別して評価する事となっています。
しかし実際にはリップルとノイズの区別はなかなか骨の折れる作業です。オシロスコープで波形を観測し目測によりそれぞれの値を読み取る作業は熟練を要しますし個人差も発生します。更には前回までの話でも有りましたとおり、プローブの接続1つでも大きく変化しますので一定の品質での測定を素早く行うにはオシロスコープでは難しいのが実情です。