【やさしい技術解説】スイッチング電源のノイズ測定は何故難しいのか? その7
スイッチング電源のノイズを効率よく安定的に測定するには、ノイズ測定専用機を使用するのが最も簡便で信頼出来る方法です。
当社ではノイズ測定専用機として、RM-103を提供しています。RM-103は日本で唯一社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が定める規格RC-9130, RC-9141に準拠した測定器です。
この規格に対応するにはリップルとノイズを分けて – 分離して測定する必要が有りますが、RM-103では当社オリジナルの「パルス幅デューティ比による分離方式」を採用し、これを実現しています。
「パルス幅デューティ比による分離方式」を使わない方法としては、スパイクノイズの高周波成分を低域フィルタで除去し、リップル電圧と見なして測定する方法などが有りますが、スパイク成分だけを理想的に取り除くことは出来ず、更にリップル電圧波形も変化を受けて正確な測定は出来ません。又、スイッチング周波数が大幅に変化(20KHzや500KHzなど)すると、スパイクのパルス幅が広い場合にはフィルタによる分離は困難となります。
「パルス幅デューティ比による分離方式」ではスイッチング電源のノイズ電圧波形が一般に下の図1の様になる事を利用し、スイッチング周波数の周期Tとスパイクノイズのパルス幅をtの比率、即ちデューティー比になる点を検出し、リップルとノイズを分離測定しています。当社ではこのデューティ比、t/T×100(%)を、リップル分離比と呼んでいます。
この方法では、全帯域幅のまま原波形に影響を与えずに分離できるため、従来のオシロスコープによる観測測定値と良く一致した結果が得られます。更に分離比は15までの範囲で自由にユーザーが設定できるため様々な波形に対しても、分離比を調節する事で適切な測定が可能になります。
前回(その6)で述べました、5種類複雑なノイズ測定もRM-103では「パルス幅デューティ比による分離方式」によるリップルとノイズの分離が出来る測定モードとフィルターモードを以下の表の様に組み合わせるだけで測定出来ます。
測定種類 | RM-103の設定 | |
---|---|---|
モード | 測定モード | フィルターモード |
リップルノイズ電圧 | ノイズ測定 | LowPass + HighPass |
リップル電圧 | リップル測定 | LowPass + HighPass |
スパイクノイズ電圧 | ノイズ測定 | HighPass |
スイッチングリップル電圧 | リップル測定 | HighPass |
ACリップル電圧 | リップル測定 | LowPass |
更にRM-103には標準で差動プローブ(DP-100)が1本付属します。これによりRM-103が1台あれば
・DP-100で理想的な「配線 – プロービング」
・RM-103で簡便かつ高品質な「測定 – 対象の分離」
と言う2つのスイッチングノイズ測定の難題が解決出来ます。