【やさしい技術解説】交流電源装置を使うときに気にしたい事その1 – 電圧歪

理想的な交流電源の電圧波形は歪の無いSIN波を示し、これに純抵抗を接続すれば、電圧変化に一致した電流が流れ、皮相電力と有効電力の比率が一致 = 力率1.0となります。

全てのエネルギーが有効に消費されるため、使うだけの電力に見合った交流電源を用意し配線を行えば良い、理想的な状態となります。

しかし実際の負荷には抵抗以外に誘導性負荷や容量性負荷などが混在したものが多く存在します。
例えば一般に使用されているスイッチング電源などは、入力部に大きなコンデンサを使用しているため急峻な電流ピークが発生し、電源の数倍に及ぶ周波数の高調波電流が流れる事になります。

こういった高調波電流は電源の波形を歪ませ、特に一般の商用電源では広く影響を及ぼし、他の機器の誤動作を招く可能性が有るため、JISやIECなどの規格により厳しく高調波規制が行われています。

商用電源と比較し、一般に交流電源装置の出力は、十分に出力インピーダンスが低いとされ、出力電圧の歪みは無いものとして利用する事が多いかと思います。しかし交流電源装置の出力インピーダンスは小さいと言っても0では有りませんので、少なからず高調波電流の影響を受けます。

下の図は実際に幾つかの交流電源の出力の状況をモニターした波形になります。図1と2はスイッチング型、図3はリニア型の交流電源を使用しています。

図1は急峻な電流変化に応答できずに電圧波形が歪んだ実際のある交流電源装置の出力をオシロスコープで観測した結果です。電流の立上がりと、立下り字に大きく歪んでいる事が判ります。

図2は全体を観測した波形になります、電圧波形のピーク付近が潰れている事が判ります。図3は同じ条件でより出力インピーダンスの低い交流電源装置を使用した結果です。歪が少なくなっている事が判ります。

電圧波形が歪んだ状態でスイッチング電源などの評価を行うと、電流はともかく電圧まで歪んでしまっているため期待した設計通りの力率にならないと言った事も有り得るため、正確な評価が出来なくなります。

この様に交流電源装置と言っても、どれを使用しても同じ結果を得られる訳では有りません。その特性を理解した上で利用する必要が有ります。

交流電源出力波形

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