【やさしい技術解説】電子負荷の応用 – その4 電池のインピーダンス測定と電子負荷

最近の二次電池の性能向上を目を見張るものがあります。

実用的な電気自動車が実現しようとしているのも二次電池の性能向上があればこそと思いますが、一般に電池の性能と言った場合どの様な事を思い浮かべられるでしょうか。

おそらく多くの方は、エネルギー密度を思い浮かべるのでは無いかと思われます。

確かにエネルギー密度は電池の単位重量あたりの取り出せるエネルギー総量であり、まさに性能を表す非常に重要な指標と言えます。実用的な電気自動車が実現する様になったのもこのエネルギー密度が大きな、軽くて容量が大きい電池が出現した事が大きな理由であろうかと思います。

しかしエネルギー密度が大きいだけでは実用的な電気自動車は実現できません。たとえ大きなエネルギーが取り出せるとしても、非常に時間が掛かるのでは使えません。いくら燃費が良くてものろのろとしか走れない自動車には乗りたくないものです。

このため電池開発ではエネルギー密度と並んで、単位時間あたりに取り出せるエネルギー量の改善も重要なテーマとなっているかと思います。

では電池開発ではどの様にして出力特性を評価するのでしょうか。このテーマに対しておそらく最も一般に用いられているのがインピーダンス測定とそれを基にした、等価回路の推定法であろうかと思います。

電池は理想的には出力劣化要素の無い純粋な起電力と見なせますが、実際には電極や中の電解質などの様々なエネルギーロスが生じる要素が包含されるため単純な方法では評価出来ません。

そこで考え出されたのが、FRAなどを使用して交流インピーダンスを広範囲な周波数に対して測定し、この結果を複素平面上にプロットしたいわゆるCole-Coleプロットの軌跡から等価回路を推定する方法です。

交流インピーダンスの測定は非常に単純です。電池に一定の交流成分を重畳した負荷を掛けると、その端子電圧は内部インピーダンスによる損失により電圧降下を生じ振動します。その振動と予め判っている重畳した成分との対比から先ず交流インピーダンスを測定します。測定時の重畳周波数は1つではなく広くスイープさせ複数測定するのがポイントです。

交流インピーダンスは直流抵抗分と位相の変化として現され、重畳周波数を替えるとそのインピーダンスも変化します。これを複素平面上にプロットしていくとベクトル線図、いわゆるCole-Coleプロットとして軌跡が描かれます。

しかしCole-Coleプロットを描いただけではある程度内部の推測は出来るものの、具体的な数値としては読み取る事はできません。ここからは回路モデルの設定と計算による推定を行います。

下の図は二次電池を単純化した等価回路になります。この等価回路での電池は起電力と電極部そして電解質部などの要素から構成されます。例えば評価対象の電池がこの様な構成になっていると仮定して、先の軌跡になるべくきれいにフィットするよう等価回路のパラメータをコンピュータープログラムを使用して、選択してやる事で各パラメータを推定する事ができます。

測定 → プロット → 推定(フィッティング)と言うのがこの手法になります。

しかし言うのは簡単ですが実際はかなりの難行です。下の等価回路には負荷線などの要素が含まれていませんし、負荷の周波数特性も考慮されていません。しかし実際の測定ではこれらの要素は無視できない存在です。
出来る限りその影響が小さくなるようにしなければ、Cole-Coleプロットがきれいな円弧にならずパラメータの導出も巧く行きません。

この測定を巧く行うにはその様な外乱を如何に小さく抑えるかがポイントとなってきます。当然負荷には広い周波数帯域が求められます。一般には二次電池の場合数十KHz程度までは振る様ですのでそれに耐えられる負荷装置を選択する必要があります。

電気自動車用電池などは先々、出足の良さなどの差別化の為より高速なレスポンスが求められ、もっと高い周波数帯域が必要になるかもしれません。

実は一般の電子負荷装置はかなり周波数帯域が狭いのが普通です。今お使いの電子負荷装置の周波数帯域は幾らでしょうか?一度御確認頂くと今まで巧く特性が取れなかった理由が判るかもしれません。

当社の電子負荷装置は汎用品でも100KHz、R&D向けのELZ-175(0V対応)やELL-355などであれば300KHzまで周波数帯域があります(-3db)。また配線インピーダンスを小さくするための専用線も御用意しています。

電池開発に使う電子負荷装置であれば、その周波数帯域の広さも気にしたいものです。

電池の等価回路

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