【やさしい技術解説】電子負荷と回生 – その3 系統連携とその条件

どの様な機器でも回生の為系統へ接続するには資源エネルギー庁の「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」を遵守する必要があります。

「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」
※経済産業省 資源エネルギー庁サイト「関係法令・ガイドライン」より最新情報をご確認ください。

今回は数KWまでの小容量の回生可能な電子負荷装置を系統に接続するにはどの様な事に注意すれば良いのかについてポイントを見てみます。

※系統の種類
ガイドラインでは系統の種類を
 ・低圧配電線
 ・高圧配電線
 ・スポットネットワーク配電線
 ・特別高圧電線路
の各種類毎に規定しています。

一般的な電子負荷は単相/三相100/200V系で使用されますが、これは低圧配電線になります。
そこで以下は低圧配電線での規定について、さらに回生可能な電子負荷装置に関わるポイントを見てみます。

■逆潮流
 逆潮流とは電気事業者からの受電点を超え、電気エネルギーを電気事業者側の配電網に戻す事を言います。
 ほんの少しでも逆潮流が起こると厳しく規制を受ける事になりますのでこれは避けたい所です。

 回生可能な電子負荷では負荷として引いてきた元のエネルギー以上には戻せませんので、元のエネルギーを
 系統から得ていれば逆潮流はありません。 回生可能な電子負荷装置を使う場合には、元のエネルギー消費
 する電源などと、電子負荷装置を同一の系統で利用する方法をお勧めします。

 系統とは無関係の電池などからエネルギーを持ってくると場合に因ってはそこで消費される以上のエネル
 ギーを返す事になり、逆潮流の恐れが出てきますのでなんらかの対策が必要になります。

■力率
 逆潮流なしの条件では、「発電設備力率が95%以上」とガイドラインでは規定されています。
 これは電子負荷装置が、電圧にちゃんと同期して電流を戻しているのか?と言う点を問題にしています。
 これは各製品毎の仕様となりますので個々に確かめる必要があります。

■常時電圧変動対策
 適正電圧である101±6V又は202±20Vを逸脱する恐れが有る場合には、自動的に電圧を調整する機能を持た
 なければならない事になっています。ただし

 ・単相2線式2kVA以下
 ・単相3線式6kVA以下
 ・三相3線式15kVA以下

 に該当する発電量(回生量)しか無い場合は免除されるとあります。
 電子負荷装置であればその負荷容量以上には回生できませんので、回生力率が1にほぼ等しいと考えると
 利用の系統形態に応じて、2kW、6kW、15kW以下と言うところを選択の基準にすると、話が簡単になります。

■瞬時電圧変動対策
 回生可能な電子負荷装置はメーカーを問わず、ほぼ間違い無く自励型の逆変換装置となります。回生部に
 あるインバーターと呼ばれる部分がこれに相当します。

 この場合ガイドラインでは「自動的に同期がとれる機能のものを使用」とあります。これは系統の電圧の変
 化(SIN波)に同期して回生エネルギーを戻す事を要求しています。

 これも各製品毎の仕様となりますので個々に確かめる必要があります。

■不要解列の防止
 解列とは電力系統から発電設備等を切り離すことを言います。要求としては電圧低下時間が整定時限以内な
 ら解列せず自動復帰を、整定時限を超える場合は切り離す事が要求されています。

 製定時限とは保護継電器が動作するまでの調整上の遅延時間の事です。

 電子負荷装置の場合、保護継電器に相当するのは、なんらかの理由で回生時の電圧を維持出来なくなった
 場合に働く保護回路になります。これが動作以上を検出するまでの時間が製定時限に相当すると言うわけで
 す。

 これはその様な保護回路があるか否かと言うことになりますので、これも各製品毎の仕様となりますので
 個々に確かめる必要があります。

■単独運転
 ガイドラインでは「単独運転禁止」とありますが、これは系統側が停電状態で発電機のみが単独で動作して
 いる状態を指します。電子負荷装置の場合、系統以外から電源を取らない限り単独運転は出来ませんので
 必ず系統より電子負荷装置自身の電源を取る様にすることをお勧めします。

以上をまとめると、回生可能な電子負荷装置を選択または使えるのかを判断するポイントは以下の様になります。

 ・負荷のエネルギーを同一の系統から引く様な用途であるか?(逆潮流防止)
 ・回生力率が95%以上か?
 ・負荷容量が2kW/6kW/15kW以下か?
 ・系統に同期して回生出来るか?
 ・回生電圧低下に対する保護回路を持っているか?
 ・電子負荷装置自身の電源へ回生する事ができるか?(単独運転防止)

当然ながら市販の回生可能な電子負荷装置は基本的にはこういった項目をクリアしています。ただ利用条件などに注釈が付いていることもありますので、選択する際には実際にお使いになりたい案件で、これらの条件を満たした使い方が出来るのかを確認する事が必要になります。

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