交流電源仕様書の見かたって、そもそもナニ?

交流電源の仕様書ついて誰にでもわかりやすく解説

仕様書って、そもそもナニ?

 仕様書をひとことで言えば・・・

「その製品が持つ機能や性能、外観などを図表などでまとめたもの」

 と言うことができます。英語の Specification を略して「スペック」と呼ばれることもあり、カタログに記載されている仕様書は「カタログスペック」と呼ばれます。

 このような仕様書は、製品の購入を検討するときの「よりどころ」となるものであり、特にデモ機など実際の製品で確認できないときは仕様書の記載内容で判断することになりますので、重要な文書です。

 特注品の受託開発の場合、要求仕様書をはじめとして様々な仕様書が必要となりますが、本稿では交流電源のカタログやWebページに記載されている一般的な仕様書を対象としています。

交流電源仕様書の項目

 本稿では当社製交流電源 8500シリーズの仕様書をサンプルとし、その主な項目についてご説明させていただきます。

項目概要
交流出力定格出力電圧・電流・電力出力可能な最大値
交流電圧設定分解能設定可能な最小のきざみ幅
設定確度設定した値からの誤差、設定の確かさ、精度
入力電源変動入力電源の変動に対する出力電圧の影響度合いで ラインレギュレーションとも呼ばれる
負荷変動負荷電流の変動に対する出力電圧の影響度合いで ロードレギュレーションとも呼ばれる
THD(全高調波歪率)出力波形の歪みの程度を数値化したもの
クレストファクタ(CF:波高率)負荷供給可能な電流波形を規定
突入電流(peak)定格電流に対して何倍まで供給できるかどうか
測定交流電圧(実効値)測定分解能測定可能な最小のきざみ幅
測定確度測定した値からの誤差、設定の確かさ、精度
保護機能プロテクションOCP過電流保護機能
OVP過電圧保護機能
OPP過電力保護機能
OTP過熱保護機能
LVP低電圧保護機能
RCP逆電流保護機能
一般仕様入力定格 入力側に供給する電源の仕様(単相または三相)
入力電圧・周波数 入力側に供給する電源の電圧・周波数
力率(最大負荷時)供給側の系統から見た力率
効率(最大負荷時)出力電力÷入力電力×100%
入力電力最大負荷時供給側の系統から見た電力(VA)
入力電流最大負荷時入力側に流れる最大電流(A)
質量本体のみ重量(kg)
寸法突起物含まず突起物を含まない外形寸法(W×H×Dmm)
環境条件動作環境設置場所
動作温度稼働時の環境温度
動作湿度稼働時の環境湿度
保存温度保存時の環境温度
保存湿度保存時の環境湿度
高度設置場所の標高

定格出力

 最大出力電流は、そのときのレンジの状態によって異なります。一般的にLOWレンジに対してHIGHレンジの出力電流は半分になりますので注意が必要です。なお、この「レンジ切り替え」という方法は、設定確度や測定確度を向上するために行うもので交流電源だけでなく一般的な計測器でも採用されています。

設定分解能

 設定可能な最小のきざみ幅であり、これよりも細かく設定しても切り捨てられますので注意が必要です。例えば設定分解能が0.1Vのときに100.05Vを設定したとしても実際に設定されるのは100.0Vとなります。

 ※一般的に操作パネルを使って設定分解能未満の値を入力することはできませんが、PCからのリモート制御で最小分解能未満の値を送ることができる場合があります。

設定確度

 設定した値に対しての誤差範囲をプラスマイナス形式で表します。交流電源8500シリーズの仕様では、

±( 0.2% of setting + 3 counts)

となっていますが、これだけだとわかりにくいですね。これは設定値(setting)に対してのばらつきを表していますので、プラス側とマイナス側に分割してみましょう。

プラス側: 設定値の0.2% + 3 counts

マイナス側: -(設定値の0.2% + 3 counts)

countsは最小分解能であり、最小分解能0.1Vの場合3 countsは 0.3Vとなります。仮に設定値が100.0Vだったとすると、

プラス側: 100Vの0.2% + 0.3V → 0.2 + 0.3V = 0.5V

マイナス側: -100Vの0.2% – 0.3V → -0.2 – 0.3V = -0.5V

 以上から、100.0Vに設定したときは99.5Vから100.5Vの範囲でばらつく可能性があると言うことになります。

T.H.D.

 T.H.D.(Total Harmonic Distortion)は、全高調波歪率と言うもので以下の式で求められます。

全高調波成分の実効値の合計 ÷ 基本波実効値 × 100(%)

 なお、この値は一般的に抵抗負荷を接続したときのものであり、実際の負荷を接続すると悪くなるのが普通です。T.H.D.の一般的な解説については以下のページをご覧ください。

THD(全高調波歪率)って、そもそもナニ? 

クレストファクタ

 クレストファクタ(CF)は、波高率と呼ばれるもので、接続対象の負荷に対して供給可能な電流波形を表しています。例えば8500シリーズの場合、≧3のように記載されていますが、これは「クレストファクタが3以上の電流波形を供給可能」という意味になっています。クレストファクタは以下の式で求めることができます。

クレストファクタ = 最大電流 ÷ 実効値

 クレストファクタの一般的な解説については、以下のページをご覧ください。

クレストファクタって、そもそもナニ? 

突入電流

 交流電源の場合、定格電流(最大出力電流)に対して何倍までのピーク電流を出力できるかどうかを規定しています。一般的な突入電流について、詳しくは以下のページをご覧下さい。

突入電流って、そもそもナニ? 

測定分解能・測定確度

 測定分解能・測定確度については、基本的に設定分解能・設定確度と考え方は同じです。

保護機能

 基本的に交流電源本体を保護するための機能ですが、OVPについては、交流電源本体はもちろんですが、接続される相手(負荷)も保護するための機能です。

略称名称備考
OCP過電流保護機能出力電流が定格を超えてOCPリミットも超えたときに出力を遮断
OVP過電圧保護機能出力電圧がOVPリミットを超えたときに出力を遮断
OPP過電力保護機能出力電力がOPPリミットを超えたときに出力を遮断
OTP過熱保護機能内部センサーの温度がOTPリミットを超えたときに出力を遮断
LVP低電圧保護機能出力電圧設定値より大きく低下したときに出力を遮断
RCP逆電流保護機能外部から電圧が印加されたときに逆電流を検出し出力を遮断

 一般的なOCPについての解説は以下のページをご覧ください。

OCP(過電流保護)って、ナニ? 

入力定格

 交流電源を稼働するための電源仕様であり、単相100/200V、三相200/400Vなど機種によって異なりますので、その機種に必要な電源を準備する必要があり、場合によっては配電工事が必要となります。

入力電流

 設置場所の電源から供給可能な最大電流が交流電源の入力電流よりも少ないとブレーカが遮断して使用できない可能性がありますので注意が必要です。交流電源の入力電流に対して少なくとも20%以上の余裕をみた電流を供給できるよう配慮してください。

 なお、配電盤のブレーカが高速タイプの場合、交流電源入力の突入電流でブレーカが遮断することがありますので、使用するブレーカは低速タイプのものを選択してください。

質量

 特に大容量交流電源の場合、その重量は数百kgを超えるものもありますので運送方法や運送費用、設置場所の耐荷重について事前に考慮することが必要です。

関連ページ

交流電源8500シリーズ https://www.keisoku.co.jp/pw/product/power/ac/8500-2-2/

交流電源お役立ち情報 https://www.keisoku.co.jp/pw/support/oyakudachi/ac/