交流電子負荷の活用(3) FC発電システムの負荷試験
FC発電システムとは
FC(燃料電池)発電システムは、水素と酸素の化学反応により電気を取り出す発電装置で、基本的なしくみは次のようになっています。
水素と酸素の反応 | 燃料電池の中で、水素ガスと酸素ガスを使います。 水素が電気を作るための燃料、酸素はそれを助ける役割です。 水素と酸素が化学反応を起こすことで電気が作られます。 この反応では、電気だけでなく、水と少量の熱も生成されます。 |
化学反応の仕組み | 燃料電池は、アノード(正極)とカソード(負極)という2つの電極を持っています。 水素はアノード側に供給され、酸素はカソード側に供給されます。 水素はアノードでプロトン(H+)と電子(e-)に分かれます。 → この電子が電気を生み出す元になります。 電子は回路を通ってカソードに流れることで電流が発生します。 同時に、プロトンは電解質を通ってカソードに移動し、そこで酸素と結びついて水(H2O)になります。 排ガスと呼べるものは無く、排出されるのは「水」だけなのでクリーンな発電と言うことができます。 |
メリット | 効率が高い 燃料電池は化石燃料を燃やす発電方法より効率的で、環境にやさしいです。 環境負荷が少ない 水しか排出されないため、二酸化炭素(CO2)やその他の有害物質がほとんど発生しません。 騒音が少ない 燃料電池は静かに作動するため、騒音が少なく住宅地でも使いやすいです。 |
利用分野 | 家庭用電力供給システムや自動車の動力源(例えば、水素で動く燃料電池車)として広く利用されています。 さらに、商業施設や工場、さらには宇宙船や潜水艦などの特殊な環境でも使われています。 |
負荷装置とは
負荷装置をひとことで言うと「様々な電源の出力に接続し、負荷をとる(=電流を流す)装置」であり、電源の性能試験には欠かせない機器のひとつです。なお、負荷装置は大きく分けて3種類の方式があります。
方式 | 特徴 | |
抵抗負荷 | 抵抗器方式 | 長所:比較的低価格 短所:設定速度が遅い(手作業)、自動化には向かない |
電子負荷(1) | ドロッパー(リニア)方式 | 長所:設定速度が速い、自動化に最適 短所:電力の再利用はできない |
電子負荷(2) | スイッチング(回生)方式 | 長所:回生動作により電力の再利用が可能 短所:比較的高価格 |
合わせて読みたい
FC発電システムの負荷試験
エージング(連続負荷試験)をする場合は抵抗負荷装置や回生可能な負荷装置が適していますが、様々な負荷モードで試験を行うときはドロッパー(リニア)方式の電子負荷装置が適しています。
負荷モード | 電子負荷の動作 |
CC(定電流) | 設定された電流値を維持する |
CR(定抵抗) | 設定された抵抗値になるような電流を流し、それを維持する |
CV(定電圧) | 設定された電圧値になるような電流を流し、それを維持する |
CP(定電力) | 設定された電力値になるような電流を流し、それを維持する |
CF(波高率) | 電流波形の波高率を設定し、様々な負荷のシミュレーションを行う |
PF(力率) | 電流波形の力率を設定し、様々な負荷のシミュレーションを行う |