DDSって、そもそもナニ?

はじめに
DDS(Direct Digital Synthesizer:直接デジタル合成器)は、デジタル技術を使って高精度で様々な信号(例えば、正弦波や方形波)を生成するための方法や装置です。本稿ではDDS方式について、わかりやすくご説明します。
基本的なアイデア
DDSは、「デジタルデータを使って波形を作り出し、それをアナログ信号に変換する」ことで、信号を生成します。一般的に正弦波を作る仕組みについて説明されることが多いので、それを例にとります。
イメージとしては、以下の3段階を考えます:
- 正弦波の形状を表す数値データの表(デジタルデータ)を準備する。
- このデジタルデータから正確な速度で各ポイントの数値を読み取る。
- 読み込んだ数値をDACによりアナログ値(電圧)に変換して出力する。
※DACはD/Aコンバータと呼ばれ、デジタル値をアナログ電圧に変換するデバイスです。
DDSの構成としくみ
DDSはあたかも、楽譜(波形テーブル)をもとに、ペースを速く(周波数を高く)したり遅く(周波数を低く)したりして音楽を演奏するようなものです。ピアノで右手だけで旋律を弾いている状況を考えるとわかりやすいかもしれません。
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DDSの中に含まれる主要な部品とその動きについて見ていきます。
1. 波形テーブル
正弦波(あるいは方形波や三角波)は、サインカーブの形に基づく数値のデータとして、あらかじめメモリ(波形テーブル)に記録されています。この波形テーブルには、1周期分の正弦波のデータが細かい点(サンプル)として保存されています。
2. 位相累積レジスタ(Phase Accumulator)
DDSでは、正弦波の「どの位置を読むか?」を決めるために「位相」という概念を使います。この位相は、時間とともに進みます。DDSでは、次のような手順で位相を計算しています:
ある一定の割合(過去に設定された周波数)で、「位相」を少しずつ進める。
この計算は位相累積レジスタというパーツで行われます。
位相は「0~360度」の範囲を超えたら、繰り返し(繰り返し周期)回るようになっています。たとえば、時計でいえば、12時を過ぎるとまた0時に戻るような考えです。この位相データに基づいて、波形テーブル(メモリ)から正弦波のデータが取り出されます。
3. 周波数制御ワード(Frequency Tuning Word)
位相の進む速さは「周波数制御ワード(FTW)」と呼ばれる値によって決まります。この周波数制御ワードの値が大きいほど、位相累積レジスタのカウントが速く進み、高い周波数になります。小さい値だとゆっくり進み、低い周波数になります。これにより、DDSの周波数は正確かつ簡単に調整できます。
4. デジタル信号からアナログ信号への変換
波形テーブルから取り出されたデータはデジタル値(数値)です。これをそのままではアナログ回路で利用できないため、DAC(デジタル・アナログ・コンバータ)という部品を使ってアナログ信号に変換します。これにより、信号発生器の出力として正弦波(または設定された波形)が出てきます。
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DDSのメリット
DDSには以下のようなメリットがあり、広く普及しています。
高い精度と安定性 | デジタルで制御されるため、温度や部品の変動に影響されにくい。 |
広範囲な周波数設定 | 周波数制御ワードを変更するだけで、大きな範囲の周波数を簡単に設定可能。 |
波形の柔軟性 | 正弦波だけでなく、方形波や三角波なども簡単に生成可能。 |
まとめ
DDSは、信号生成、無線通信、計測器、医療機器、音響技術、センサー、モータ制御など、多くの分野で利用されています。その主な特徴(正確な周波数制御や柔軟な波形生成)を活かし、特定の業界やアプリケーションに特化したシステムに実装されることで、現代の技術発展を支えています。