コンデンサって、そもそもナニ?

はじめに

身の回りの様々な電子機器に使われている「コンデンサ」ってそもそも何のために使われているのでしょう?電源回路などで目にする電解コンデンサの形はタンクに似ているので「コンデンサは電気をためるためにあるんじゃないの?」と思っている方も多いかも知れません。また、コンデンサの電気回路記号は2枚の板(電極)が向かい合った形をしており、電気をためてくれそうですね。

確かにその通り「電気を蓄える」のも重要な役割のひとつになっています。この蓄える能力は、コンデンサの電極表面積が広いほど大きく、さらに2枚の電極間の距離が近いほど大きくなります。また、コンデンサの2枚の電極は「絶縁材」によって分離(絶縁)されており、一般的に誘電体と呼ばれています。

コンデンサはトランジスタのように信号を増幅したりする能動的な動作は出来ないため、抵抗器やコイルと同じように「受動部品」と呼ばれます。

コンデンサのイメージ
コンデンサの電気回路記号
コンデンサの電気回路記号

※コンデンサの名称について
「電気」というものが何なのかわかっていなかった頃に「濃縮する(Condense)」という意味で命名されたもので、海外ではキャパシタ(Capacitor)と呼ばれることが定着しています。

コンデンサの役割

直流ではコンデンサの中に電気を蓄えたり、逆にその蓄えた電気を放電することもできます。これはスマホなどのバッテリーに充電し、その後スマホを使って放電することに似ています。これに対して交流では主に次のような用途でコンデンサが使われています。

直流成分のカット高電圧の直流に微小な交流成分が乗っているとき、コンデンサを通せば交流成分だけを取り出すことができます。これはオシロスコープの「ACカップリング」で使われており、直流成分をカットする基本的な方法となっています。
直流成分のカット
平滑回路「へいかつかいろ」と言うと難しそうですが、文字通り「平らにならす回路」で、交流成分が残っている直流の交流部分をならして平らに(より直流らしく)するものです。以下の回路は「半波整流回路」と呼ばれるもので、交流をダイオードで整流したプラス側のみの交流(半波)をコンデンサを使って「平ら」にしています。
平滑回路
フィルタ回路コンデンサを回路に直列に挿入するとHPF(高域通過フィルタ)として動作します。また、コンデンサを回路に並列に接続するとLPF(低域通過フィルタ)として動作します。前述のACカップリングはHPF、平滑回路はLPFと考えることもできます。以下の回路は抵抗とコンデンサを使ったLPFとなっており、抵抗とコンデンサを入れ替えるとHPFとして動作します。
フィルタ回路
同調回路AMラジオなどで特定の周波数に同調し選局するための回路で、可変容量タイプのコンデンサ(バリアブルコンデンサ)が使われています。以下の回路はゲルマニウムラジオと呼ばれる最も簡単なラジオの例で、同調コイルとコンデンサ(バリアブルコンデンサ=バリコン)が並列に接続されており、バリコンを回転させて選局するようになっています。
同調回路
ノイズ除去デジタル回路のICなどの電源ラインにノイズが乗って誤動作するときなど、コンデンサを電源ラインに挿入してノイズを除去することができます。このようなコンデンサをバイパスコンデンサ(パスコン)と呼んでおり、ICの動作に不要な(誤動作の原因となる)交流成分(=ノイズ)をコンデンサによりバイパスしてグランドに落とすものです。
このときに使用するコンデンサは発生しているノイズの周波数帯域に合わせたコンデンサ(セラミックコンデンサなど)を選択すると効果的です。

コンデンサの種類

名称特徴
セラミックコンデンサ元々は高周波で用いられる小容量のものが多かったが、現在では電極を積層構造にした比較的大容量の積層セラミックコンデンサも普及している。
フィルムコンデンサ主にアナログ回路用で、他のコンデンサよりも高耐圧のものが多いため高電圧を扱う回路に使用されている。
マイカコンデンサ誘電体にマイカ(雲母)が使用されており、他のコンデンサと比較して容量の精度が高く高温環境でも使用できる。
アルミ電解コンデンサ一般的に大容量で周波数特性は良くないためオーディオなどの低い周波数で用いられる。耐圧や極性を間違えると発煙や破裂の危険があり注意が必要。
タンタルコンデンサアルミ電解コンデンサよりも小さく周波数特性が良いが、逆電圧や過電圧に弱く故障すると短絡状態になり周囲の回路を焼損する恐れがあるので注意が必要。
バリアブルコンデンサ
(バリコン)
回転軸を回すことで容量を変化できるコンデンサで、ラジオなどの同調回路に使われているが、現在のラジオはデジタル化されているため、あまりみられなくなっている。
トリマコンデンサ前項のバリアブルコンデンサと似ており、容量を変化できるが電子回路のボード上に実装され製品の出荷前に一度調整するのみ。一般的にトリマコンデンサは調整用のドライバを使って回すことが多い。
電気二重層コンデンサ他のコンデンサよりも大容量であり、バックアップ電源などに使用されている。他の二次電池と違って化学反応が無いため、充放電の回数に制限が無い。

終わりに

今回は様々な電子回路で必ずと言って良いほど使われているコンデンサをテーマとして様々なコンデンサの特徴や用途についてご説明しました。今後コンデンサについて少しでも理解を深めて頂ければ幸いです。

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計測技術研究所では、コンデンサの開発や評価などで使われている製品をリリースしております。

直流安定化電源 https://www.keisoku.co.jp/pw/product/power/dc/
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