PSFファイルって、そもそもナニ?
システム定義ファイルとは?
スイッチング電源自動検査システムは、自動検査ソフトウエアPowerTestSiteシリーズにより自動検査を実行しています。PowerTestSiteシリーズではシステムの中に組み込まれて検査に使用する機器を「システム定義ファイル」の中に登録しており、このシステム定義ファイルのファイル拡張子がPSFであることから、システム定義ファイルはPSFファイルと呼ばれています。なお、PowerTestSiteシリーズは稼働するハードウエアによってソフトウエアを以下のように区別しています。
ハードウエア型式 | ソフトウエア名称 | 備考 |
PTS-mini | PowerTestSiteMINI | 小規模検査システム |
LTS-mini | PowerTestSiteMINI | LED電源用miniシステム |
PW-800 | PowerTestSite/PW-800 | |
PW-5000 | PowerTestSitePRO |
これらのPowerTestSiteシリーズソフトウエアはシステム定義ファイルとしてPSF形式を採用しており、本稿ではPW-800のPSFファイルを例としてご説明させていただきます。
システム定義ファイルのメリットとは
システムで使用する機器の構成をシステム定義ファイルとして検査プログラム本体と分離することによって、次のようなメリットが生まれます。
システム構成の変更が容易
検査対象DUTの変更に伴いシステム機器構成の変更が必要になることがあります。このような場合、検査プログラム本体はそのままでシステム定義ファイルのみの変更で柔軟に対応することができます。なお、システム定義ファイルはWindowsメモ帳で容易に編集することができます。
システム構成の切り替えが可能
PowerTestSiteシリーズでは複数のシステム定義ファイルを登録することができますので、検査対象DUTの仕様に応じてシステム定義ファイルを容易に切り替えて使用することができます。
電子負荷の並列運転に対応
一般的に電子負荷の電流容量が不足したときに複数の電子負荷を並列に接続して電流容量を増やすことはできますが、その場合、それぞれの電子負荷に個別に電流値を設定することが必要です。このような場合、システム定義ファイルにより複数のチャンネルをまとめて仮想的なひとつのチャンネルとして定義すると、検査プログラムで設定した電流値を自動的に複数の電子負荷に振り分けて流してくれますので大変便利です。
このように、スイッチング電源の自動検査に必要な機器の構成をソフトウエア本体と分離してユーザに開放することにより検査プログラムの変更が最小限で済むように設計されています。
PW-800のハードウエア構成
PW-800ハードウエアの基本的な構成は下図のようになっており、PSFファイルにこれらの機能をひとつずつ登録することによって検査プログラムから個々の機能を使うことが可能となります。
使用機器の名称 | 機能 | |
入力機器 | 交流電源 | 入力電圧・周波数設定 |
パワーメーターユニット | 入力電圧・電流・ピーク電流・電力測定 | |
OV試験ユニット(※) | OV試験用DC電源、OV試験用スキャナ(8CH) | |
DVM測定ユニット(※) | DVM、DVM測定用スキャナ(16CH) | |
デジタルI/Oユニット(※) | 入力:フォトカプラ、出力:オープンコレクタ(各8CH) | |
出力機器 | 電子負荷CH1 | 負荷設定(70V, 50A, 300W) |
電子負荷CH2 | 負荷設定(70V, 20A, 100W) | |
電子負荷CH3 | 負荷設定(70V, 20A, 100W) | |
電子負荷CH4 | 負荷設定(70V, 10A, 50W) | |
電子負荷CH5 | 負荷設定(70V, 10A, 50W) | |
出力測定ユニットCH1~5 | 出力測定(DC電圧・電流・電力、リップルノイズ) |
※OV試験ユニット、DVM測定ユニット、デジタルI/Oユニットは入力機器として登録します。
PSFファイルの構造
Webサイトのページを記述する言語として知られているHTML(Hyper Text Markup Language)は聞いたことがあると思います。このHTMLと似ている形式でXML(eXtensible Markup Language)というものがあり、PSFファイルの基本構造はXML形式がベースとなっています。
XMLを直訳すると「拡張可能なマークアップ言語」となりますが、HTMLでは固定になっていた「タグ」を自由に設定することができるためデータ構造の定義(システム構造の定義)に適しており、視覚的にも見やすくなっています。
PW-800のPSFファイル
PW-800の基本構成(5ch出力)では、以下のようなPSFファイルになっています。
基本情報の定義
システム名称やインターフェースなどの基本的な情報が定義されており、通常変更する必要はありません。
チャンネル0(入力機器)情報の定義
交流電源や直流電源など、入力側に接続される機器の情報を定義しています。また、スキャナ関連の情報もここで定義します。
チャンネル1~5(出力機器)情報の定義
電子負荷やリップルノイズメータなど出力側に接続される機器の情報を定義しており、以下はCH1の記述例です。
このように、測定などの機能単位で定義することにより検査プログラム側ではPSFファイルで定義された機能の中から選択することができます。逆に言えば使用できない機能は選択出来ないということになりますので間違いがありません。
電子負荷の並列運転
PW-800に内蔵された電子負荷は以下のような仕様となっています。
CH1 | CH2 | CH3 | CH4 | CH5 | |
定格電圧 | 70V | ||||
定格電流 | 50A | 20A | 20A | 10A | 10A |
定格電力 | 300W | 100W | 100W | 50W | 50W |
仮に新規DUTで100Aの負荷が必要になった場合、外部に大容量の負荷を設置する方法もありますが、PW-800の負荷を並列運転としてPSFファイルを定義して使用することもできます。
補足)並列運転の電流設定について
並列運転の動作モードとして以下の2種類から選択することができます。
<DRIVE>EVEN</DRIVE>
全てのチャンネルに設定電流値を案分して流します。従って、少ない電流設定でも全てのチャンネルに電流が流れます。
<DRIVE>ODD</DRIVE>
CH1がフルになったらCH2、CH2がフルになったらCH3というように流します。従って、少ない電流設定時はCH1のみ流れます。
関連ページ
PowerTestSiteシリーズ https://www.keisoku.co.jp/pw/product/system/review/pts/
PW-800電源自動検査システム https://www.keisoku.co.jp/pw/product/system/review/pw-800/